【日本人女性を食事に誘う話】
昔、トロントで異文化交流の飲み会に参加していた。ワーホリで引越してきたばかりの日本人女性
と仲良くなって連絡先を交換した。日本ではテレビ局のADをしていたが、留学に憧れていてカナダに来た。可愛くて、飯に誘いたいと思った。紳士のナンパだ。 数日後、電話が掛かってきた。
「助けて下さい!知らない人にさらわれています!」
彼女は泣き声でパニックだった。何が起きているか伝わらない状況がしばらく続いて、電話から男性の声が聞こえた。男性は英語で話す。
「私は救急救命士です。彼女をこれから病院に運びます。英語が通じないので、困っています。旦那、親族、もしく彼氏ですか?病院にすぐ来てください。」
責任を感じた。
仕事を放置して、すぐ病院に向かう。
彼女は救急の病室にいた。髪が乱れていて、顔、腕、足は痣だらけだった。ノーメイクで夏の部屋着、ベッドの横にサンダル。点滴が刺さっていて、シクシク泣いていた。
どうやら、携帯でメールを見ようとしたが、電波が家の中に届かないから外に出た。熱中症で路上で倒れたが、あまつさえ発作が起きて痣だらけになった。近所の人が見かけて救急車を呼んだ。意識が戻ったら、知らない人達(救急救命士)に囲まれていて怖かったらしい。パニックになって私に電話をしたそうだ。
バッグ(財布)なしで運ばれた彼女は文無し。英語が出来なくて通訳も必要。助ける事にした。
話を聞くと、発作は今まで一度も無かったと言う。倒れた原因は熱中症だが、元を言うと無理した(危険な)ダイエットをしていた。食事をしていなくて体力が無いうえ脱水病状だった。
「ダイエットはしなくていいんじゃないかな?」
「でも、、」
「何も食べないから倒れたんだよ。」
「・・・。」
「お腹すいてない?」
「お腹すいた」
「いま食べたいのは?」
「中華!」
数時間後、無事病院を出る。部屋着ノーメイクの女性が便サンで歩いて帰るのは可哀想なので、車で家まで送る。そしてその夜、彼女を中華に連れて行く。
本来なら女性との食事は誘い文句から始まるが、相手が心配で助けたいと、思いや言葉も変わる。
一回しか会った事ないのに、倒れた時何故私に電話したか訊いた。引越してきたばかりで、友達がまだ出来ていないらしい。ルームメイトとは仲良くない。連絡出来る人が限られたらしい。(飲み会では他の男性とも連絡先を交換していたと思うので、気が合ったのかな。)
後日、お礼をしたいとの事で、また会った。
お礼の印に、バナナの香りがするお香を二個頂いた。
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